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大阪地方裁判所 平成6年(ワ)2186号 判決

大阪市北区松ヶ枝町六番三号

原告

篠原電機株式会社

右代表者代表取締役

篠原耕一

右訴訟代理人弁護士

石田好孝

右訴訟復代理人弁護士

武藤信一

右輔佐人弁理士

折寄武士

大阪府守口市南寺方東通五丁目五五番地

被告

株式会社カメダデンキ

右代表者代表取締役

有田正作

右訴訟代理人弁護士

谷口由記

右輔佐人弁理士

杉本丈夫

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  被告は、別紙第一物件目録(一)記載の物件を生産し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し又は輸入してはならない。

二  被告は、原告に対し、金四五〇万円及びこれに対する平成六年三月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  仮執行の宣言

第二  事案の概要

一  事実関係

1  原告の権利

(一) 原告は、左記の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)を有している(争いがない。)。

特許番号 第一五二二八〇〇号

発明の名称 ボックス等ののぞき窓用窓枠

出願日 昭和五五年九月八日(特願昭五八-一二二七八九)(前実用新案出願日援用)

出願公告日 平成元年一月二四日(特公昭六四-四〇三三)

特許請求の範囲

「金属板からなる環状の主枠体3と、主枠体3の背面側に対向状に配される、金属板からなる環状の副枠体4と、前記両枠体3、4間に介装される環状のパッキング5とからなり、主枠体3の幅方向中央部には、背面側に向けてボルト6を適当間隔置きに植設し、副枠体4およびパッキング5には、前記ボルト6の挿通を許すボルト通し孔7、8をそれぞれ設け、パッキング5の内周面には窓ガラス板11の周縁に嵌合する周溝10を形成し、パッキング5の外周面には窓孔2の孔縁aに添う縁部を連成してあり、主枠体3および副枠体4は、その外周縁が窓孔2の孔縁aに均等に重なるよう幅寸法を設定してあり、副枠体4の背面側から前記ボルト6にナット12を螺合することにより、主枠体3と副枠体4の外周縁が、パッキング5の外周面に連成した前記縁部を介して窓孔2の孔縁aを挾持する取付け状態となり、前記取付け状態において、前記ボルト6が窓孔2の孔縁aに近接ないし接触していることを特徴とするボックス等ののぞき窓用窓枠。」(別添「本件特許公報」〔甲第一号証〕参照)

(二) 本件発明の特許請求の範囲の記載は、次の構成要件に分説するのが相当と認められる(甲第一号証、弁論の全趣旨)。

A 金属板からなる環状の主枠体3と、

B 主枠体3の背面側に対向状に配される、金属板からなる環状の副枠体4と、

C 前記両枠体3、4間に介装される環状のパッキング5とからなり、

D 主枠体3の幅方向中央部には、背面側に向けてボルト6を適当間隔置きに植設し、

E 副枠体4及びパッキング5には、前記ボルト6の挿通を許すボルト通し孔7、8をそれぞれ設け、

F パッキング5の内周面には窓ガラス板11の周縁に嵌合する周溝10を形成し、

G パッキング5の外周面には窓孔2の孔縁aに添う縁部を連成してあり、

H 主枠体3及び副枠体4は、その外周縁が窓孔2の孔縁aに均等に重なるよう幅寸法を設定してあり、

I 副枠体4の背面側から前記ボルト6にナット12を螺合することにより、主枠体3と副枠体4の外周縁が、パッキング5の外周面に連成した前記縁部を介して窓孔2の孔縁aを挾持する取付け状態となり、

J 前記取付け状態において、前記ボルト6が窓枠2の孔縁aに近接ないし接触していること

K を特徴とするボックス等ののぞき窓用窓枠。

(三) 本件発明の作用効果について、本件発明の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には次のとおり記載されている(本件特許公報4欄20行ないし37行)。

「主枠体3に植設したボルト6は窓孔2内を通るものであるから、従来のごとく窓孔2の孔縁部にボルト通し孔を明ける煩雑な作業を要さず、かつ該孔縁部にボルト通し孔を明けることに起因する発錆の問題もない。

にもかかわらず、ボルト6にナット12を螺合することにより、主枠体3と副枠体4の外周縁が、パッキング5の外周面に連成の縁部を介して窓孔2の孔縁aを確りと挾着する取付け構造となっており、窓枠の取付け作業性も良い。そして、この取付け状態において、万一外部からの火災の熱を受けてもパッキング5が焼損を受けるに止まり、前記ボルト6が窓孔2の孔縁aに近接ないし接触するように位置設定されているので、該ボルト6で前記孔縁aに主枠体3と副枠体4とが焼け残って窓ガラス板11を支持しており、該ガラス板11の脱落をも防止する利点を有する。」

2  被告の行為

被告は、ボックス等ののぞき窓用窓枠(検甲第四号証。以下「イ号物件」という。)を製造、販売した(争いがない。原告は、被告は現在もイ号物件を製造、販売していると主張し、被告は、現在はイ号物件を製造、販売していないと主張する。)。

イ号物件について、原告は別紙第一物件目録(一)記載のとおり特定すべきであると主張し、被告は別紙第一物件目録(二)記載のとおり特定すべきであると主張するが、第一パッキング部材5a、第二パッキング部材5b、第三パッキング部材5cをまとめてパッキング5と呼称するか(原告)、しないか(被告)を除き、当事者間に争いはない。

3  原告製品

原告は、本件発明の実施品である別紙第二物件目録記載のボックス等ののぞき窓用窓枠を製造、販売している(検甲第三号証、弁論の全趣旨。以下「原告製品」という。)。

二  原告の請求

原告は、被告によるイ号物件の製造販売は本件特許権を侵害するものであり、また、原告製品の形態は原告の商品表示として周知性を取得しているところ、イ号物件の形態は原告製品の形態と類似し、原告製品との誤認混同を生じさせているから、被告によるイ号物件の製造販売は不正競争防止法二条一項一号所定の不正競争に当たると主張して、特許法一〇〇条一項又は不正競争防止法三条一項に基づき、イ号物件の生産、譲渡等の差止めを求めるとともに、民法七〇九条又は不正競争防止法四条に基づき、損害賠償として四五〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成六年三月一九日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

三  争点

1  イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属するか。

2  原告製品の形態は、商品表示性、周知性を取得しているか。

3  イ号物件の形態は、原告製品の形態と類似しこれと誤認混同を生じさせているか。

4  被告が損害賠償義務を負う場合、原告に対して支払うべき金額。

第三  争点に関する当事者の主張

一  争点1(イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属するか)について

【原告の主張】

1 イ号物件(別紙第一物件目録(一))の構成は、次のとおりである。

a 耐食性を確保するために、アルマイト加工仕上げをしたアルミニウム合金板からなる四角形環状の主枠体3を有すること、

b 主枠体3の背面側に対向状に配される四角形環状の副枠体4を有し、この副枠体4もアルマイト加工仕上げをしたアルミニウム合金板で作られていること、

c 前記両枠体3・4間に介装される環状のネオプレンスポンジ製の第一パッキング部材5aと、ネオプレンゴム製の第三パッキング部材5cと、ネオプレンスポンジ製の第二パッキング部材5bとからなるパッキング5を有すること、

d 主枠体3にボルト6が螺合するねじ孔12aを設けてあること、

e 副枠体4には、前記ボルト6の挿通を許すボルト通し孔7を設けてあること、

f パッキング5を構成する第一パッキング部材5aの内周面には、金網入りの窓ガラス板11の周縁に嵌合する周溝10を形成してあること、

g パッキング5は、前記第一パッキング部材5aの外周に窓孔2の孔縁aの内外に添う第二・第三パッキング部材5b・5cを有すること、

h 主枠体3及び副枠体4は、その外周縁が窓孔2の孔縁aに均等に重なるよう幅寸法を設定してあること、

i 副枠体4の背面側から前記ボルト6をねじ孔12aに螺合することにより、主枠体3と副枠体4の外周縁が、パッキング5の第二・第三パッキング部材5b・5cを介して窓孔2の孔縁aを内外方向から挟持する取付け状態となること、

j 前記取付け状態において、前記ボルト6が窓孔2の孔縁aに近接ないし接触していること

k を特徴とするボックス等ののぞき窓枠用窓枠。

2 イ号物件の構成a、b、c、h、j、kは、それぞれ明らかに本件発明の構成要件A、B、C、H、J、Kを充足する。

そして、イ号物件は、ボルト6とパッキング5の仕様を本件発明の仕様と一部変更しているため、その他の構成d、e、f、g、iは、本件発明の構成要件D、E、F、G、Iと形式的には異なるが、次の(一)ないし(三)のとおり、実質的には右各構成要件を充足する均等の技術ないしは本件発明の不完全利用に外ならない。

(一) ボルトについて

元来、ボルトとナットは二つの部材AとBとを締結するための手段であり、そのボルトを部材Aの側から挿通するか部材Bの側から挿通するかは、適宜選択できるところであって、その挿通方向の違いは技術的に重要な意義を有するものではない。本件発明においても、ボルト6は主枠体3と副枠体4とを締結するための手段であり、重要なのは、該ボルト6を窓孔2の孔縁aに近接ないし接触させるように挿通すること(構成要件J)であって、この構成をとることにより、正面板1の窓孔周縁部にボルト通し孔を開けずに窓枠をボルト止めできる点に本件発明の特徴(主要部)がある。イ号物件のボルト6も主枠体3と副枠体4とを締結するための手段であり、また、本件発明のナット12は、ボルト6が螺合するねじ孔を内周面に有するものであり、この限りにおいてイ号物件のねじ孔12aは機能的にみて本件発明のナット12に相当するものであって、正面板1の窓孔周縁部にボルト通し孔を開けずに窓枠をボルト止めできるという本件発明の特徴を備えている。イ号物件におけるボルトの構造の変更は、本件発明において比較的重要でない部分における変更にすぎず、しかも、かかる変更は当業者にとって容易なことである。

被告は、イ号物件のボルトに関する構造は、主枠体3に突部20を一体に形成し、この突部20にねじ孔12aを形成したものであって、本件発明に比べて製作コストの面で優れていると主張するが、主枠体3はアルミニウム合金押出形材を定尺切断してベンダーで環状に曲げ加工するものであり、曲げ加工の後に多数のねじ孔12aを一つ一つ主枠体に刻設することになるから、大変な手間を要すること、ねじ孔12aは凹設されているので塵埃が入り易く、ボルト6をねじ孔12aにねじ込む作業すら困難となるおそれがあることからすると、それにもかかわらずねじ孔12aを後加工により主枠体3に形成する構造にせざるをえなかったのは、ひとえに本件特許権の侵害を免れるために外ならない。

したがって、ボルトに関するイ号物件の構成d、e、iは、本件発明の構成要件D、E、Iを実質的に充足する均等の技術に外ならない。

(二) パッキングについて

本件発明におけるパッキング5は、窓ガラス板11の外周縁に嵌合装着されて損傷防止と気密性(水密性)を図るとともに、窓孔2の孔縁aに対する主枠体3及び副枠体4の気密性(水密性)を図るための緩衝部材である。イ号物件におけるパッキング部材5a・5b・5cも同様の機能を有するものであって、このようにパッキングを三分割することによって、第一パッキング部材5aと第二パッキング部材5b・第三パッキング部材5cとの間に本件発明におけると同様のボルト通し孔7が生じるようになっている。

被告は、イ号物件のパッキング部材5a・5b・5cは、分割することにより、断面H字形のゴム質環状枠よりも製作コスト面で優れ、かつ、ガラスの嵌込み作業を容易にすると主張するが、パッキングを三分割すれば、それに応じて三種類の成形金型を必要とし、製品を構成する部材の点数が増加するのであるから、製作コストが低下するということはできない。

したがって、パッキングに関するイ号物件の構成f、g、iは、本件発明の構成要件E、F、G、Iを実質的に充足する均等の技術に外ならない。

(三) 作用効果について

イ号物件(別紙第一物件目録(一)の二)は、本件発明の主たる作用効果(前記第二の一1(三))と同一の作用効果をそっくりそのまま奏するものである。

3(一) 被告が公知技術として引用する乙第一号証の実用新案公報記載の技術は、その考案の名称からも明らかなとおり「継手」に関するものであって、隣接するガラス板A・B等を並列状につなぐ部材を対象とするものであり、既に開口している正面板1の窓孔2に窓枠を取り付けるに際し、いかにして正面板1の窓孔2の周縁部にボルト通し孔を開けることなく、しかも間に窓ガラス板11を挟んで窓枠をボルト止めすることができるか、という本件発明における技術課題は全く念頭になく、したがって、ボルト6を窓孔2の孔縁aに近接ないし接触させるように窓孔2内に挿通するという構成をとることにより、正面板1の窓孔2周縁部にボルト通し孔を開けずに窓枠をボルト止めできるという本件発明の特徴は同公報には全く示されておらず、本件発明とは技術分野が異なり比較の対象外である(乙第二号証の実用新案公報記載の技術も同様である。)。

特許庁審査官も、本件発明の審査の過程において、これら乙第一、第二号証記載の技術と本件発明とを十分比較検討の結果、このことを認めて登録査定をしたものである。

(二) 株式会社エイデンパーツの「計器読取用窓枠」は、本件発明の出願前においては、パネルの孔縁に孔開け加工をし、これに取付けねじを挿通した形態であったのであり、乙第七号証のパンフレット掲載のものとは異なるのであって、右パンフレットは昭和四九年当時のものではなく、最近に作製されたものである。

【被告の主張】

1 本件発明についての特許には、以下のとおり全部公知又は進歩性欠如による無効事由があるから、本件発明の技術的範囲は、特許請求の範囲に記載されている字義どおりの内容を持つものとして最も狭く限定して解釈するか、本件明細書記載の実施例と一致するものに限定されると解釈すべきところ、イ号物件の構造を本件発明の特許請求の範囲の記載又は本件明細書記載の実施例と対比すると、ボルト及びパッキングの構造において異なっていることが明らかであるから、イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属しない。

(一) 本件発明の出願前に頒布された「硝子版等の接手」の考案に係る実公昭三六-二七〇九三号実用新案公報(別添「乙第一号証」)及び「耐水圧気密サッシ」の考案にかかる実公昭四六-二二三五五号実用新案公報(別添「乙第二号証」)

乙第一号証の実用新案公報における登録請求の範囲の記載は、「図面に示す通り、一対の接手版1、2の各対応裏面の両側に弾褥版Bの掛止用掛突条3、4を対向突設し、版1、2の同じく中央には掛止溝5を有する掛止部6と掛止壁7の一対を嵌合自在に対設し、掛止壁7の所要部分を切欠した切欠部10とこれに対応して掛止溝5の底面に螺孔9を設け、掛止部6と掛止壁7を相嵌合させるとともに両版1、2の両側内部に弾褥版B、Bを嵌設し、版1の切欠部10より挿出させた螺杆10を螺孔9に螺着させて成る硝子版等の接手の構造。」というものであり、実用新案の説明の欄には、「このさい各弾褥版Bはいずれも上下よりの掛突条3、4の挿入によって側方に移動せず、また版1、2は掛止溝5と掛止壁7の嵌合により極めて確実に揺動のおそれなくまた緊締螺杆8を簡単に螺じ込むのみで足りるためその工作において硝子版Aに対し何等工作を必要とせぬもので、極めて簡単迅速でありまた組立外観においても佳良で硝子等の縁枠兼用ともなる利点があり実用上工作し難いまた割れ易い素材版の接手として有益である。」(一頁右欄5行ないし14行)との記載がある外、「硝子版A、A等」(同頁左欄11行)、「硝子等」(同欄14行)、「硝子版A等」(同欄21行ないし22行)との記載がある。

このように、乙第一号証の実用新案公報には、その硝子版等の接手は、片方がガラスで他方が窓枠の場合にも利用可能であり、接手部分がガラス等の縁枠兼用となる技術であることが記載されており、そして、接手部分が窓枠となる場合には、ボルトが窓孔内にあり孔縁に近接対向ないし接触状態にあって孔縁側にボルト通し孔を開けなくてもよいし、火災発生時においてその熱でパッキングが破損しても、窓ガラス板が窓孔から外れ落ちないことも、示されているか、あるいは示されていないとしても当業者に十分予測可能であるということができる。したがって、本件発明は全部公知であるか又は進歩性が欠如している。

(二) 株式会社エイデンパーツの製造販売にかかる、キュービクル及び自立盤の窓に取り付ける「計器読取用窓枠」(別添「乙第七号証」)

株式会社エイデンパーツは、昭和四八年一二月に金型を製作したうえ、昭和四九年から、「計器読取用窓枠」(乙第七号証)を年間三〇〇ないし四〇〇枚製造、販売している(乙第九号証の1・2)。この窓枠は、透明アクリル板を嵌め込むものであるが、ガラス板の場合も技術的に変わるところはない。その構造は、表面から表側ゴム枠を取り付け、内側からアクリル板を嵌め込み、アクリル板に内側ゴム枠を取り付け、その上に押え金具を当て、ナットで締め付けるというものであり、本件発明はこれと同一である。

2(一) イ号物件のボルトに関する構造は、本件発明のようにボルト6を主枠体3に植設しているのではなく、主枠体3に突部20を一体に形成し、この突部20にねじ孔12aを形成したものであって、これは、本件発明の出願前に公知の技術であった右1(一)の乙第一号証の実用新案公報記載のガラス窓枠の構造とほぼ同じであり、本件発明に比べて製作コストの面で優れている。原告は、右公知技術の存在により本件発明の出願が拒絶されるため、右公知技術における掛止部6(イ号物件の突部20)に螺孔9(イ号物件のねじ孔12a)を設ける構造に代えて、主枠体3の幅方向中央部に背面側に向けてボルト6を適当間隔置きに植設するという、製作コスト面で劣った別の公知技術を採用したものである。

原告は、イ号物件の右構造について、ねじ孔12aは凹設されているので塵埃が入り易く、ボルト6をねじ孔12aにねじ込む作業すら困難となるおそれがあると主張するが、凹部は塵埃が除去できないほど細長くはないし、イ号物件の取付作業は塵埃のない場所で行われるものである。逆に、本件発明では、ボルトのねじ山が露出しているため、他の部材との接触でねじ山が傷ついて潰れ、完全に取り付けられないおそれも生じるといえる。

(二) また、イ号物件のパッキング部材5a・5b・5cは、パッキングを単に三分割したというだけのものではなく、分割することにより、断面H字形のゴム質環状枠よりも製作コスト面で優れ、かつ、ガラスの嵌込み作業を容易にするという優れた作用効果を奏する。

(三) したがって、イ号物件は、その構成だけでなく作用効果においても本件発明と異なっているから、本件発明と均等の技術であるということはできないし、不完全利用の理論の適用もない。

二  争点2(原告製品の形態は、商品表示性、周知性を取得しているか)について

【原告の主張】

1 原告製品(別紙第二物件目録)の形態は、次のような特徴を有しており、この特徴により取引者の間において一見して原告製品であると認識される商品表示性を有しているものである。

(1) それぞれがアルミ押出形材を材料とする主枠体3と副枠体4とを備えていること。

(2) 主枠体3と副枠体4とは、四角形の環状に形成してあること。

(3) 主枠体3と副枠体4の各コーナー部は丸く曲げて形成してあること。

(4) 主枠体3と副枠体4との間に、透明の窓ガラス板11が介在すること。

(5) 窓ガラス板11は、外部から透視可能な金網入りの強化ガラスであること。

(6) 主枠体3と副枠体4との間には、この外周に沿って窓ガラス板11を挟着するパッキング5が外部に臨むよう配設されていること。

(7) 主枠体3と副枠体4とを締結するボルト6を有し、このボルト6は一部が副枠体4の裏面側に出ているが、主枠体3の前面側からは見えないようにしてあること。

被告は、拒絶理由通知に対する原告の昭和六三年七月八日付意見書(乙第六号証)の記載を引用して、原告は原告製品の基本的形態が公知のものであることを自認していると主張するが、右記載は、特許要件の考察において該当の技術的要素自体が公知であることを認めたにすぎないのであって、計器類の「のぞき窓用窓枠」において主枠体と副枠体とで窓ガラス板をパッキングを介して挟着することが公知であったわけではない。また、右(1)の点について、被告の主張する電車や家の窓枠は比較の対象外である。(2)の点について、被告は、窓の形状が一般的に四角形であるから、これに対応した枠体も四角形の環状となると主張し、(3)の点について、主枠体と副枠体の各コーナー部のアール径は一般的なものであると主張するが、「環状」で「各コーナー部は丸く曲げて形成してある」とは、一連につながっていて材料のアルミ押出形材の両端が一点で溶接されていることを意味するのであって、電車や家の窓枠に採用されているものとは異なる。(7)の点について、株式会社エイデンパーツの「計器読取用窓枠」は、前記のとおり、本件発明の出願前においては、パネルの孔縁に孔開け加工をし、これに取付けねじを挿通した形態であったのであり、乙第七号証のパンフレット掲載のものとは異なるのであって、右パンフレットは昭和四九年当時のものではなく、最近に作製されたものである。しかも、右「計器読取用窓枠」は、取付けねじの頭部が表側ゴム枠の前面に露出していて外部から見えるものであるから、原告製品の右(7)の特徴を備えたものでもない。

また、被告主張の本件明細書の発明の詳細な説明における従前技術についての記載中、本件特許公報2欄5行ないし10行は、断面H字形のゴム質環状枠、つまり原告製品におけるゴムパッキング5のみを使用する形態が存在していたことを説明しているにすぎないし、同じく同欄17行ないし22行は、窓孔縁に予めボルト通し孔を形成する必要があった従来例の不具合についての説明であると同時に、「表側の金属枠に通したボルト」とは、ボルトが表側金属枠に外側から挿通されてそのボルト頭部が外部から見える状態であったことを意味するものである。この種の窓枠において、アルミ押出形材でコーナー部を丸くした四角形環状の主枠体と副枠体とを用いたのは原告製品が初めてであった。そして、原告製品の、主枠体3の前面側からはボルト6が一切見えないという(7)の特徴は、外観上の体裁を考慮するとき、商品価値の点からして、また防錆の点からして極めて意義のあることである。

なお、原告製品における窓ガラス板11の縦横の有効寸法(単位はいずれもミリメートル)については、原告は、縦二〇〇に対し横が二〇〇、三〇〇、四〇〇のもの、縦三〇〇に対し横が三〇〇、四〇〇、五〇〇、六〇〇、七〇〇のもの、縦四〇〇に対し横が四〇〇、五〇〇のもの、縦五〇〇に対し横が五〇〇、六〇〇のもの等を標準的なものとして用意している。被告は、窓ガラス板11の有効寸法はボックス等の正面板に穿たれている窓の大きさに対応して必然的に決定される旨主張するが、旧来の断面H字形のゴム質環状枠を使用していたときの窓の寸法は、原告製品を当て嵌める現在の窓の寸法とは異なる。

2 被告は、原告製品の形態は、技術的機能を達成するための構成に由来する形態として、不正競争防止法二条一項一号にいう商品表示に該当しない旨主張するが、主枠体3と副枠体4とで窓ガラス板11をパッキング5を介してサンドイッチ状に挾持すること自体は技術的要請であるとしても、主枠体3と副枠体4の形状をどのように設定するかという一点をみても、原告製品の形状に設定すべき技術的必然性はない。例えば、両枠体をプラスチック成形品とすること、あるいは、金属板で作るとしても、枠体の各コーナー部で金属片どうしを溶接して四角形にすることも可能であるし、コーナー部は直角に交わる形態にすることも可能であるが、原告製品は、美感上の観点から、各コーナー部のアール度を曲率半径五八ミリメートルに設定し、枠体は、アルミ押出形材をベンダーで四角形に曲げ加工したのち、下辺の中央で突き合わせて溶接しているなど、原告がデザイン上の優位性を考慮して選択したものであり、同じ技術的要請に応えるために他の形状を選ぶことは極めて容易のはずである。

3 原告は、昭和五六年以降、原告製品を全国の電気設備資材業者からの発注を受けて製造、販売しており、原告製品は、全国の建物に設置されていて、国内におけるシェアはイ号物件を除き一〇〇パーセントであり、現在の年間販売数量は約一万個、年間販売金額は約一億円であって、昭和五七年頃には、計器類ののぞき窓でアルミ窓枠といえば、原告製品を指すとともに、前記のように商品表示性を有する原告製品の形態は、取引者の間において広く知られるに至っている。

被告主張の意匠登録出願は、ボルトの位置が本件発明の出願時点(各コーナーのサイドに計八本)と比較して変更を生じた(各コーナーに設けるようになった)ので、いわゆる防衛出願の趣旨でなしたものであるから、右意匠登録出願(各コーナーの四本を含め計八本)をしたからといって、その出願日以前に原告製品(各コーナーの四本を含め計一〇本)を販売していなかったということにはならない。意匠法上の類似性の判断と不正競争防止法上の類似性の判断とは、自ずから異なるものである。

【被告の主張】

1 原告が、原告製品の形態の特徴として主張する(1)ないし(7)の点は、いずれも公知のものであって、何ら特異性がなく、商品表示としての機能を有しないというべきである。

すなわち、まず、原告は、本件発明の出願についての拒絶理由通知に対する昭和六三年七月八日付意見書(乙第六号証)において、「窓ガラス板11が嵌合する周溝10を備えたパッキング5の表裏を主枠体3と副枠体4とでサンドイッチ状に挾み、両枠体3・4をボルト止めする基本形態が両引例に公知であることは認めます。」と述べ、原告製品の基本的形態が公知のものであることを自認している。また、右(1)の点について、アルミ押出形材を材料とするということが形態といえないことはさておくとして、原告製品の製造販売前から、電車や家の窓には、アルミ押出形材の窓枠が使用されていた。(2)の点について、窓の形状が一般的に四角形であるから、これに対応した枠体も四角形の環状となる。(3)の点について、主枠体と副枠体の各コーナー部のアール径は一般的なものである。(4)の点について、窓枠に透明のガラス板を使用することは特段新しいことではない。(5)の点について、屋外の計器盤の窓枠のガラスには金網入りの強化ガラスを使用しなければならないし、これはJIS規格で指定されている。原告製品も一般の汎用品を用いており、特異性はない。(7)の点について、両枠体3・4をボルト止めする基本形態は前記のとおり公知であったし、ボルトの頭部が主枠体の前面側から見えない構造は、株式会社エイデンパーツの「計器読取用窓枠」において本件発明出願前の昭和四九年に既に採用されていた(乙第七号証)。乙第一号証の実用新案公報においても、主枠体3に相当する版1の前面側からはボルト6に相当する緊締螺杆8は見えないようになっていることが示されている。

原告自身、本件明細書の発明の詳細な説明において、従前技術について「ボックスののぞき窓における窓ガラス固定構造としては、その窓枠として外周面及び内周面にそれぞれ溝をそなえる断面H字形のゴム質環状枠を使用し、先づ内周面の溝を利用して枠内に窓ガラスを嵌め、次に外周面の溝を利用してのぞき窓の孔縁に装着する形式がある。」(本件特許公報2欄5行ないし10行)と記載しており、原告主張の(1)ないし(6)の形態が既に存在していたことを明記しているものである。これに対する原告の主張は、事実に反し、禁反言の原則に反して許されないというべきである。また、同じく「窓ガラス取付に熟練を要しないものとしてはガラスの周縁にパッキングを装着してこのパッキングを表裏の金属枠で挟み、且つ表側の金属枠に通したボルトをのぞき窓孔縁に形成した孔に通し、次いで裏側の金属枠にも通してナット締着するものであるため・・・・」(同欄17行ないし22行)と記載しており、同様に原告主張の(1)ないし(6)の形態及び(7)の「主枠体3と副枠体4とを締結するボルト6を有し、このボルト6は一部が副枠体4の裏側に出ている」との形態が既に存在していたことを明記しているものである。

なお、窓ガラス板11の有効寸法は、ボックス等の正面板に穿たれている窓の大きさ(縦が二〇〇ないし四〇〇ミリメートル、横が二〇〇ないし五〇〇ミリメートルのものが一般的である。)に対応して必然的に決定されるものであるから、原告製品に特異性はない。原告製品の販売開始前にボックス等の窓は存在しており、したがってそれに対応した窓枠の大きさも必然的に決まっているから、原告が窓枠の大きさを決めたものでないことは明らかである。

2 そもそも、商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態を不正競争防止法二条一項一号にいう商品表示に該当するとして保護することは、商品表示に化体された他人の営業上の信用を保護するというにとどまらず、当該商品本体が本来有している形態、構成やそれによって達成される実質的機能、効用を、他者が商品として利用することを許さず、独占利用させることになり、同一商品についての業者間の競争自体を制約する結果を生ずるから、商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態は、右にいう商品表示には該当しないと解するのが相当である。

原告製品は、計器盤の壁面に穿たれた窓に窓枠でガラスを嵌め込む構成であり、壁面に穴を開けずにガラス板を主枠体と副枠体とでサンドイッチ状に挟着するための技術的課題を解決する方法として両枠体をボルト止めする技術的構成は、商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態であるから、結局、原告製品の形態は、技術的機能を達成するための構成に由来する形態として、同条同項同号にいう商品表示たりえない。

3 原告は、原告製品の形態について、平成元年五月一六日に意匠登録出願を行い、平成四年九月二九日に意匠登録を受けている(乙第一一号証)。このように、平成元年五月一六日に新規性を有するとして意匠登録出願をしている以上、同日以前には原告製品は販売されていなかったはずであるから、原告が昭和五六年に原告製品の製造販売を開始し、翌五七年頃にその形態が商品表示として周知性を取得したということはありえない。

原告は、右意匠登録出願をなしたのはボルト6の位置が本件発明の出願時点と比較して変更を生じたからである旨主張するが、ボルトの位置が各コーナーのサイドであるか各コーナーであるかの違いだけで意匠が異なるものではなく、現に、原告は、原告製品の形態の特徴の(7)としてボルトが主枠体3の前面側からは見えないようにしてあることを挙げているのである。

三  争点3(イ号物件の形態は、原告製品の形態と類似しこれと誤認混同を生じさせているか)について

【原告の主張】

1 イ号物件(別紙第一物件目録(一))の形態は、原告製品の形態(前記二【原告の主張】1)と外観上全く同一であり、その差異を見分けるのは困難である。

イ号物件における窓ガラス板11の縦横の有効寸法(単位はいずれもミリメートル)は、縦二〇〇に対し横が二〇〇のもの、縦三〇〇に対し横が三〇〇、四〇〇、五〇〇のもの、縦四〇〇に対し横が五〇〇のもの等があり、原告製品と同一である。のぞき窓用窓枠の市場は原告が独占しているため、窓の大きさは原告製品の寸法に対応するよう取引各社が穿設している状況において、被告がこの窓の寸法に対応できるようにしようとするから、イ号物件の寸法まで原告製品と同一になるのである。

被告は、イ号物件と原告製品とは外観上容易に峻別することができる旨主張するが、ボルトが主枠体3の前面側から見えないようにすることが外観体裁上の要請であって、該ボルトを用いた具体的な締結構造やそれに基づく微細な外観上の差異は、技術的事項にすぎず、類似性を否定する重要な要因とはなりえないし、パッキングが三個に分かれているという点についても、原告製品もイ号物件も、主枠体3と副枠体4とが一体化されて取引されるのであるから、内部のパッキングがどのようになっているかは外部からは見えず、外観上は差異がない。

2 原告製品が市場を独占している現状において、被告がイ号物件を取引者に売り込みに来たとき、イ号物件の形態が寸法まで同一であるから、取引者は、既設の原告製品を見て、これと同一の製品ということで、イ号物件を被告に対して注文することがありうるのであり、ここに、出所の誤認混同を生じるおそれが十二分にある。被告において、商品の差別化を積極的に図る意図がない以上当然のことである。特に、原告製品とイ号物件とが同一の代理店を通して販売されるとき、出所の混同を生じることは必至である。原告と被告との会社名が異なるから注文先を間違えることはないにしても、取引者及び需要者がいずれの商品であるか区別できずに、原告に注文すべき商品を被告に注文することはありうることである。

【被告の主張】

1 原告製品もイ号物件も、主枠体3と副枠体4とが一体に結合されて梱包され、流通に置かれ、窓枠として取り付ける際に分解のうえ取り付けられるのであるが、この取付けの際、裏側から見ると、原告製品はナット締めであるのに対して、イ号物件はボルトの頭部が見えているだけであるから、明らかに締付けの形態が異なること、原告製品のパッキングはH字形で一個のものであるのに対して、イ号物件のパッキングは、ボックス等の正面板の孔縁の前面と主枠体との間に置かれるもの(第二パッキング部材5b)、正面板の孔縁の裏面と副枠体との間に置かれるもの(第三パッキング部材5c)及びガラスと主枠体・副枠体との間に置かれるもの(第一パッキング部材5a)の三個に分かれていること、窓ガラス板11を嵌める点ではイ号物件の方が原告製品より容易であるが、取付け作業自体は原告製品の方がイ号物件より容易であることという相違があり、取引者及び需要者は配電盤メーカー等の技術専門家であるから、外観上容易に峻別することができ、誤認混同するおそれはない。寸法については、原告製品もイ号物件も窓の大きさに対応した形状である以上、同じような寸法になるのは当然である。

また、窓枠という商品の性質上、設計の幅は極めて狭いから、形状の点においても似かよったものとなるのは必然的である。

2 その上、原告製品、イ号物件のようなのぞき窓用窓枠の販売形態は、店頭における展示販売ではなく、営業担当者が自社製品のサンプル又はパンフレット(但し、被告はパンフレットは作製していない。)を持って、問屋や需要者である配電盤メーカーを回って自社製品を販売する訪問販売である。このため、取引者及び需要者が製品を注文する際には、どの製造業者の製品を採用しようかと慎重に考慮し、製品の出所を峻別して注文するのであって、製品の形状を見て注文するものではないから、原告製品を注文しようと思って、誤ってイ号物件を注文するというようなことは起こりえないし、現に起こったこともない(このことは、原告代表者自身も認めている。)。取引者及び需要者は、製造業者を峻別したうえで、価格の安い方を注文するというのが実情なのである。

また、被告は、イ号物件の包装に「カメダデンキ」の商号と本店住所を大きく表示しており、誤認混同が生ずることのないよう配慮している。

四  争点4(被告が損害賠償義務を負う場合、原告に対して支払うべき金額)について

【原告の主張】

被告は、遅くとも平成五年七月頃からイ号物件を製造、販売しており、その販売数は平成六年二月末日までで一五〇〇個を下らない。原告は、原告製品を一個平均一万円で販売しており、その粗利益は、一個につき三〇〇〇円を下らない。原告製品は従前より市場を独占してきており、原告は、被告がイ号物件を販売していなければその分だけ原告製品を販売して四五〇万円の利益を得られたはずであるから、原告はこれと同額の損害を被った。

第三  当裁判所の判断

一  争点1(イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属するか)について

1  第一パッキング部材5a、第二パッキング部材5b、第三パッキング部材5cをまとめてパッキング5と呼称する点を除き、当事者間に争いのない別紙第一物件目録(一)の記載及び検甲第四号証(イ号物件の現物)によれば、イ号物件は、本件発明の構成要件(前記第二の一1(二))に対応させて分説すると、次の構成からなるものと認められる。

a アルマイト加工仕上げをしたアルミニウム合金板からなる四角形環状の主枠体3を有すること、

b 主枠体3の背面側に対向状に配される、アルマイト加工仕上げをしたアルミニウム合金板からなる四角形環状の副枠体4を有すること、

c 前記両枠体3、4間に介装される環状のネオプレンスポンジ製の第一パッキング部材5aと、ネオプレンゴム製の第三パッキング部材5cと、ネオプレンスポンジ製の第二パッキング部材5bとからなるパッキング5を有すること、

d 主枠体3には、背面側の外周近くに環状の突部20を一体に形成し、該突部20にボルト6が螺合するねじ孔12aを合計一〇か所設けてあること、

e 副枠体4には、外周近くに前記ボルト6が挿通されるボルト通し孔7を前記ねじ孔12aに対応させて形成してあること、

f 第一パッキング部材5aの内周面には、金網入りの窓ガラス板11の外周縁に嵌合する周溝10を形成してあること、

g 前記突部20の外周に窓孔2の孔縁aの内外に添う第二・第三パッキング部材5b・5cを有すること、

h 主枠体3及び副枠体4は、その外周縁が窓孔2の孔縁aに均等に重なるよう幅寸法を設定してあること、

i 副枠体4の背面側から前記ボルト6をボルト通し孔7を挿通して突部20のねじ孔12aに螺合することにより、主枠体3と副枠体4の外周縁が、第二・第三パッキング部材5b・5cを介して窓孔2の孔縁aを内外方向から挾持する取付け状態となること、

j 前記取付け状態において、前記ボルト6が窓孔2の孔縁aに近接していること

k を特徴とするボックス等ののぞき窓枠。

2  右のイ号物件の構成を本件発明の構成要件(前記第二の一1(二))と対比すると、イ号物件の構成a「アルマイト加工仕上げをしたアルミニウム合金板からなる四角形環状の主枠体3を有すること」は、本件発明の構成要件A「金属板からなる環状の主枠体3」を充足し、同じくb「主枠体3の背面側に対向状に配される、アルマイト加工仕上げをしたアルミニウム合金板からなる四角形環状の副枠体4を有すること」は、B「主枠体3の背面側に対向状に配される、金属板からなる環状の副枠体4」を、h「主枠体3及び副枠体4は、その外周縁が窓孔2の孔縁aに均等に重なるよう幅寸法を設定してあること」は、H「主枠体3及び副枠体4は、その外周縁が窓孔2の孔縁aに均等に重なるよう幅寸法を設定してあり、」を、j「前記取付け状態において、前記ボルト6が窓孔2の孔縁aに近接していること」は、J「前記取付け状態において、前記ボルト6が窓枠2の孔縁aに近接ないし接触していること」を、k「を特徴とするボックス等ののぞき窓枠。」は、K「を特徴とするボックス等ののぞき窓枠。」をそれぞれ充足すると認められる。

一方、主枠体3と副枠体4の締結方法について、本件発明は、D「主枠体3の幅方向中央部には、背面側に向けてボルト6を適当間隔置きに植設し、」、E「副枠体4及びパッキング5には、前記ボルト6の挿通を許すボルト通し孔7、8をそれぞれ設け、」、I「副枠体4の背面側から前記ボルト6にナット12を螺合することにより、主枠体3と副枠体4の外周縁が、パッキング5の外周面に連成した前記縁部を介して窓孔の孔縁aを挾持する取付け状態となり、」という構成であるのに対して、イ号物件は、d「主枠体3には、背面側の外周近くに環状の突部20を一体に形成し、該突部20にボルト6が螺合するねじ孔12aを合計一〇か所設けてあること」、e「副枠体4には、外周近くに前記ボルト6が挿通されるボルト通し孔7を前記ねじ孔12aに対応させて形成してあること」、i「副枠体4の背面側から前記ボルト6をボルト通し孔7を挿通して突部20のねじ孔12aに螺合することにより、主枠体3と副枠体4の外周縁が、第二・第三パッキング部材5b・5cを介して窓孔2の孔縁aを内外方向から挾持する取付け状態となること」という構成である点で相違し、主枠体3と副枠体4との間に介装されるパッキングの構造について、本件発明においてはパッキング5という一つの部材である(構成要件C)のに対して、イ号物件においては5a、5b及び5cという三つの部材で構成されている(構成c)点で相違し、これに伴い、本件発明の構成要件E、F、G、Iとイ号物件の構成e、f、g、iとが相違することが明らかである。

3  原告は、右相違点について、ボルトに関するイ号物件の構成d、e、iは、本件発明の構成要件D、E、Iを実質的に充足する均等の技術に外ならず、パッキングに関するイ号物件の構成f、g、iは、本件発明の構成要件E、F、G、Iを実質的に充足する均等の技術に外ならないと主張するので、以下検討する(なお、原告は、不完全利用の主張もするが、その要件についての具体的な主張もなく、採用することができない。)。

(一) まず、右主枠体3と副枠体4の締結方法(ボルト)に関する構成の相違について、原告は、元来、ボルトとナットは二つの部材AとBとを締結するための手段であり、そのボルトを部材Aの側から挿通するか部材Bの側から挿通するかは適宜選択できるところであって、その挿通方向の違いは技術的に重要な意義を有するものではなく、本件発明においても、ボルト6は主枠体3と副枠体4とを締結するための手段であり、重要なのは該ボルト6を窓孔2の孔縁aに近接ないし接触させるように挿通すること(構成要件J)であって、この構成をとることにより、正面板1の窓孔周縁部にボルト通し孔を開けずに窓枠をボルト止めできる点に本件発明の特徴(主要部)があるところ、イ号物件のボルト6も主枠体3と副枠体4とを締結するための手段であり、また、本件発明のナット12はボルト6が螺合するねじ孔を内周面に有するものであり、この限りにおいてイ号物件のねじ孔12aは機能的にみて本件発明のナット12に相当するものであって、正面板1の窓孔周縁部にボルト通し孔を開けずに窓枠をボルト止めできるという本件発明の特徴を備えており、イ号物件におけるボルトの構造の変更は本件発明において比較的重要でない部分における変更にすぎず、しかも、かかる変更は当業者にとって容易なことである旨主張する。

本件明細書によれば、本件発明は、キュービクル等のボックスの正面板に形成されるガラス張りののぞき窓における窓枠の改良に関するものであって(本件特許公報2欄2行ないし4行)、従前の技術としては、〈1〉「ボックスののぞき窓における窓ガラス固定構造としては、その窓枠として外、周面及び内周面にそれぞれ溝をそなえる断面H字形のゴム質環状枠を使用し、先づ内周面の溝を利用して枠内に窓ガラスを嵌め、次に外周面の溝を利用してのぞき窓の孔縁に装着する形式」(同欄5行ないし10行)と、〈2〉「窓ガラス取付に熟練を要しないものとしてはガラスの周縁にパッキングを装着してこのパッキングを表裏の金属枠で挟み、且つ表側の金属枠に通したボルトをのぞき窓孔縁に形成した孔に通し、次いで裏側の金属枠にも通してナット締着するもの」(同欄17行ないし22行)とがあったところ、右〈1〉の断面H字形のゴム質環状枠を使用するものは、「締付ボルトを必要とせず従ってのぞき窓孔縁へのボルト通し孔の形成も不要とするが、反面窓ガラスの取付けに熟練を要し且つ2人以上の手を必要とし、作業に相当の時間がかかるのみならず、火災発生でゴム質の環状枠が溶け、窓ガラスが外れるおそれがある」(同欄11行ないし16行)という問題点があり、右〈2〉のガラスの周縁に装着したパッキングを表裏の金属枠で挟み、表裏の金属枠及びのぞき窓孔縁にボルト通し用孔を形成するものは、「窓ガラス装着に当って窓孔縁に予めボルト通し用孔を形成する必要があり作業が煩雑である」(同欄22行ないし24行)という問題点があったので、本件発明は、これらの問題点を解決すべく、「のぞき窓孔縁に窓枠取付けのためのボルト通し孔を設けず且つ枠体の取付けが容易であり、しかもパッキングが溶けても窓ガラスが外れるおそれなき窓枠とする」(同3欄1行ないし4行)ことを目的とするものであることが認められる。

そして、証拠(乙第七号証〔パンフレット〕、第八号証、第九、第一〇号証の各1・2)によれば、株式会社エイデンパーツ(前身「シンエイ産業」)は、昭和四九年からキュービクル、自立盤の窓が簡単に取り付けられる完全防水型「計器読取用窓枠」を販売していること、この「計器読取用窓枠」の構成を、本件発明の構成要件に対応させて分説すると、

〈a〉 プレス仕上げされた黒色合成ゴムからなる四角形環状の表側ゴム枠と、

〈b〉 表側ゴム枠の背面側に対向状に配される、プレス仕上げされた黒色合成ゴムからなる四角形環状の内側ゴム枠とからなり、

〈d〉 表側ゴム枠の背面側の幅方向中央部に環状の突部を一体に形成し、該突部を貫通する取付けねじ挿通用孔を設け、

〈e〉 内側ゴム枠には、取付けねじの挿通を許す孔を設け、

〈f〉 表側ゴム枠の環状の突部の内周面は、透明アクリル板の周縁に嵌合するようになっており、

〈g〉 表側ゴム枠の外周面には窓孔の孔縁に添う縁部を連成してあり、

〈h〉 表側ゴム枠及び内側ゴム枠は、その外周縁が窓孔の孔縁に均等に重なるよう幅寸法を設定してあり、

〈i〉 表側ゴム枠の取付けねじ挿通用孔を挿通した取付けねじに内側ゴム枠の背面側からナットを螺合することにより、表側ゴム枠と内側ゴム枠の外周縁が窓孔の孔縁を挟持する取付け状態となり、

〈j〉 前記取付け状態において、前記取付けねじが窓孔の孔縁に近接していること

〈k〉 を特徴とするボックス等ののぞき窓用窓枠。

というものであることが認められる(原告は、株式会社エイデンパーツの「計器読取用窓枠」は、本件発明の出願前においては、パネルの孔縁に孔開け加工をし、これに取付けねじを挿通した形態であったのであり、乙第七号証のパンフレット掲載のものとは異なるのであって、右パンフレットは昭和四九年当時のものではなく、最近に作製されたものであると主張するが、右乙第八号証、第九号証の1・2によれば、株式会社エイデンパーツは、右〈a〉〈b〉〈d〉ないし〈k〉の構成の「計器読取用窓枠」を昭和四九年から年間三〇〇ないし四〇〇枚販売していることが、乙第一〇号証の1・2によれば、同社は、右乙第七号証と同じ内容のパンフレットを東大阪市の米岡印刷株式会社に依頼して、前身の「シンエイ産業」の時代の昭和四九年三月に四〇〇〇枚、昭和五一年三月に二〇〇〇枚、株式会社エイデンパーツになってからの昭和五二年七月に四〇〇〇枚印刷したことが、それぞれ認められる。)。

右株式会社エイデンパーツの「計器読取用窓枠」の構成は、これを本件発明の構成要件と対比すると、本件発明の主枠体・副枠体に相当する表側ゴム枠・内側ゴム枠の材料が金属ではなく合成ゴムであり、窓本体がガラス板ではなく透明アクリル板であり、独立したパッキングがなく主枠体・副枠体に相当する表側ゴム枠・内側ゴム枠がパッキングの機能を兼ねており、取付けねじ(ボルト)を主枠体に相当する表側ゴム枠に植設していない点で相違するものの、他は本件発明の構成要件と一致するものと認められ、右相違点のうち、本件発明のように表裏の枠体を金属製とすること、窓本体をガラス板とすること、独立したパッキングを介装することは従前技術として存在したものであり(本件明細書記載の〈2〉)、格別新規な構成ということはできない。そして、ボルトを主枠体に植設する構成は、従前存在したと認めるに足りる証拠がないところ、右「計器読取用窓枠」においても、〈j〉「前記取付け状態において、前記取付けねじが窓孔の孔縁に近接していること」という構成自体は備えているのであるから、本件発明において重要なのは、単に原告主張のように「前記取付け状態において、前記ボルト6が窓孔2の孔縁aに近接ないし接触していること」(構成要件J)にあるということはできず、かかる構成をどのようにして実現するかという、「主枠体3の幅方向中央部には、背面側に向けてボルト6を適当間隔置きに植設し」たとの点(構成要件D)にあるといわなければならない。

したがって、この構成要件Dにかかわるイ号物件の構成dは、原告主張のように本件発明において比較的重要でない部分における変更にすぎないということはできない。

また、ボルトとナットは二つの部材AとBとを締結するための手段であり、本件発明においてもイ号物件においても、ボルト6は主枠体3と副枠体4とを締結するための手段であることは原告主張のとおりであるが、イ号物件においては、本件発明における、主枠体3にボルト6を植設し、副枠体4の背面側からナット12を螺合するという構成に代えて、単に、主枠体3にナット12(に相当するもの)を設け、副枠体4の背面側からボルト6を螺合するという構成を採用したものではなく、主枠体3に環状の突部20を一体に形成し、該突部20にボルト6が螺合するねじ孔12aを設けたもの(構成d)であって、この構成を採用することにより、環状の突部20の背面側の端面が副枠体4の主枠体側の面と当接することになるのでボルトの過度の締付けが防止され、また、環状に突出した突部20が窓ガラス板を取り付けた状態での防水効果に寄与するという、本件発明にはない効果を奏するものと認められ、本件発明における構成要件D、E、Iに代えてイ号物件における構成d、e、iを採用することが当業者にとって容易であると認めるに足りる証拠はない。

原告は、主枠体の曲げ加工の後に多数のねじ孔12aを一つ一つ主枠体に刻設することになるから、大変な手間を要すること、ねじ孔12aは凹設されているので塵埃が入り易く、ボルト6をねじ孔12aにねじこむ作業すら困難となるおそれがあることからすると、それにもかかわらずねじ孔12aを後加工により主枠体3に形成する構造にせざるをえなかったのは、ひとえに本件特許権の侵害を免れるために外ならない旨主張する。しかしながら、主枠体の突部にねじ孔12aを刻設することが、本件発明のように主枠体にボルト6を植設することよりも手間を要すると認めるに足りる証拠はなく、また、ねじ孔12aに塵埃が入り易く、ボルト6をねじこむ作業すら困難となるおそれがあると認めるに足りる証拠はない。

したがって、イ号物件の構成d、e、iは、本件発明の比較的重要でない部分における変更であるとも、本件発明の構成要件D、E、Iに代えてこれを採用することが当業者にとって容易ともいうことができないから、本件発明の構成要件D、E、Iを実質的に充足する均等の技術であるということはできない。

(二) 次に、主枠体3と副枠体4との間に介装されるパッキングの構成の相違について、本件発明におけるパッキングは、原告主張のように、窓ガラス板11の外周縁に嵌合装着されて損傷防止と気密性(水密性)を図るとともに、窓孔2の孔縁aに対する主枠体3及び副枠体4の気密性(水密性)を図るための緩衝部材であることが明らかであり、検甲第四号証によれば、イ号物件のパッキング部材5a・5b・5cも同様の機能を有するものと認められるところ、被告は、イ号物件においてこのようにパッキングを分割することにより、断面H字形のゴム質環状枠よりも製作コスト面で優れ、かつ、ガラスの嵌込み作業を容易にするという優れた作用効果を奏する旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

しかして、検甲第四号証によれば、イ号物件においてパッキングを三部材に分割する構成としたのは、前示のとおり、主枠体3と副枠体4の締結方法として、主枠体3に環状の突部20を一体に形成し、該突部20にボルト6が螺合するねじ孔12aを設けるという構成を採用したことから、主枠体3と副枠体4の間に介装されるパッキングは必然的に右環状の突部20によって少なくとも上下二つに分割せざるをえないためである、つまり、パッキングの分割は、イ号物件において前記d、e、iの構成を採用したことに基づく必須の構成であると認められる。したがって、前記(一)のとおり、イ号物件の前記d、e、iの構成が本件発明の構成要件D、E、Iを実質的に充足する均等の技術ということができない以上、イ号物件においてパッキングを三部材に分割した構成も本件発明の構成要件C、E、F、G、Iを実質的に充足する均等の技術ということはできない。

4  以上によれば、イ号物件は本件発明の技術的範囲に属するということはできない。

したがって、本件特許権の侵害を理由とする原告の差止請求及び損害賠償請求は理由がない。

二  争点2(原告製品の形態は、商品表示性、周知性を取得しているか)及び争点3(イ号物件の形態は、原告製品の形態と類似しこれと誤認混同を生じさせているか)について

1  原告は、原告製品(別紙第二物件目録)の形態は、

(1) それぞれがアルミ押出形材を材料とする主枠体3と副枠体4とを備えていること、

(2) 主枠体3と副枠体4とは、四角形の環状に形成してあること、

(3) 主枠体3と副枠体4の各コーナー部は丸く曲げて形成してあること、

(4) 主枠体3と副枠体4との間に、透明の窓ガラス板11が介在すること、

(5) 窓ガラス板11は、外部から透視可能な金網入りの強化ガラスであること、

(6) 主枠体3と副枠体4との間には、この外周に沿って窓ガラス板11を挟着するパッキング5が外部に臨むよう配設されていること、

(7) 主枠体3と副枠体4とを締結するボルト6を有し、このボルト6は一部が副枠体4の裏面側に出ているが、主枠体3の前面側からは見えないようにしてあること

という特徴を有しており、この特徴により取引者の間において一見して原告製品であると認識される商品表示性を有しているところ(争点2)、イ号物件(別紙第一物件目録(一))の形態は、原告製品の形態と外観上全く同一であり、その差異を見分けるのは困難であり、原告製品が市場を独占している現状において被告がイ号物件を取引者に売り込みに来たとき、イ号物件の形態が寸法まで同一であるから、取引者は、既設の原告製品を見て、これと同一の製品ということで、イ号物件を被告に対して注文することがありうるのであり、ここに出所の誤認混同が生じるおそれが十二分にある(争点3)旨主張する。

2  まず、商品の形態は、本来、商品の機能をよりよく発揮し、あるいは美感を高めるなどのために選択されるものであって、商品の出所を表示するために選択されるものではないが、特定の業者の商品が他社の商品と異なる独自の形態を有し、当該形態に着目して取引がされるような場合には、永年にわたって当該形態が排他的に使用されるとか、当該商品が右形態を有することを強調した宣伝広告が強力に展開されることにより、第二次的に、当該商品形態が出所表示機能を取得し、このように商品表示性を取得した商品形態が周知性を取得することがありうるので、以下、この観点から検討する。

原告製品は、別紙第二物件目録の記載及び検甲第三号証(原告製品の現物)によれば、原告主張のような形態を備えていることが認められるところ、前示のとおり、本件明細書によれば、従前の技術として、〈2〉「窓ガラス取付に熟練を要しないものとしてはガラスの周縁にパッキングを装着してこのパッキングを表裏の金属枠で挟み、且つ表側の金属枠に通したボルトをのぞき窓孔縁に形成した孔に通し、次いで裏側の金属枠にも通してナット締着するもの」があり、また、前記のとおり株式会社エイデンパーツ(前身「シンエイ産業」)が昭和四九年から販売していた「計器読取用窓枠」(乙第七号証)は、(1)それぞれがプレス仕上げされた黒色合成ゴムを材料とする表側ゴム枠と内側ゴム枠とを備えていること、(2)表側ゴム枠と内側ゴム枠とは、四角形の環状に形成してあること、(3)表側ゴム枠と内側ゴム枠の各コーナー部は丸く曲げて形成してあること、(4)表側ゴム枠と内側ゴム枠との間に、透明アクリル板が介在すること、(5)透明アクリル板は、外部から透視可能であること、(7)表側ゴム枠と内側ゴム枠とを締結する取付けねじを有し、この取付けねじは、先端が内側ゴム枠の裏面側に出ているが、表側ゴム枠の前面側においては、頭部が表側ゴム枠に形成された溝にぴったり嵌め込まれていて面一になっていること、という形態を備えていることが認められる。

右事実によれば、主枠体と副枠体とを備え(原告主張の原告製品の特徴(1))、主枠体と副枠体とが四角形に形成してあり(同(2))、主枠体と副枠体との間に、透明の、外部から透視可能な窓ガラス板が介在し(同(4)及び(5))、主枠体と副枠体との間には、この外周に沿って窓ガラス板を挟着するパッキングが外部に臨むよう配設されており(同(6))、主枠体と副枠体とを締結するボルトを有し、このボルトの一部は副枠体の裏面側に出ている(同(7))という、のぞき窓用窓枠の基本的形態は、従前より存在したことが本件明細書の記載により明らかであり、この従前ののぞき窓用窓枠においては、主枠体と副枠体とが、アルミ押出形材を材料とし(原告主張の原告製品の特徴(1))、環状に形成してあり(同(2))、その各コーナー部は丸く曲げて形成してあり(同(3))、窓ガラス板が金網入りの強化ガラスであり(同(5))、ボルトが、主枠体の前面側からは見えないようにしてある(同(7))、という形態を備えているかどうかは不明であるが、右の形態のうち、主枠体と副枠体とが、環状に形成してあり(同(2))、その各コーナー部は丸く曲げて形成してあり(同(3))、窓ガラス板が金網入りの強化ガラスである(同(5))という形態は、のぞき窓用窓枠として通常の形態ということができ(前の二点〔同(2)及び(3)〕は、株式会社エイデンパーツの「計器読取用窓枠」も備えている。)、原告製品独自の形態ということはできない。

これに対し、主枠体と副枠体とがアルミ押出形材を材料とし(同(1))、ボルトが主枠体の前面側からは見えないようにしてある(同(7))との点は、のぞき窓用窓枠として通常の形態と認めるに足りる証拠はない(主枠体と副枠体とがアルミ押出形材を材料としているという点については、アルミ押出形材を材料としていること自体を商品の形態として捉えることはできないが、材料がアルミ押出形材であることによる枠体の色、質感等を主張するものと解される。)。

しかしながら、原告代表者の供述及び弁論の全趣旨によれば、原告製品のようなのぞき窓用窓枠は、一般消費者向けに店頭で販売されるものではなく、配電盤や高圧受電盤のメーカーが購入するものであり、原告から配電盤等のメーカーに対し問屋を通じて又は直接販売されるものであることが認められ、問屋は、原告の直接の取引の相手方であるから、原告製品の形態によってその出所を認識するようなことは考えられず、また、配電盤等のメーカーが、原告製品の取付け容易性や性能に関係する内部構造を検討することなく前記のような外観上の形態のみに着目して取引をするものとは考え難いから、右のような点を含めた原告製品の形態が出所表示機能を取得しているものとは認められない(したがって、その周知性いかんは問題にならない。)。

3  更に、イ号物件の形態が原告製品と類似しこれと誤認混同が生じるか否かを検討するに、前示のように原告製品のようなのぞき窓用窓枠は、一般消費者向けに店頭で販売されるものではなく、配電盤や高圧受電盤のメーカーが購入するものであり、原告から配電盤等のメーカーに対し問屋を通じて又は直接販売されるものであるから、問屋がイ号物件の形態を見てこれを原告の製品であると誤認して従前取引のない被告に注文するようなことはありえないし、配電盤等のメーカーは、イ号物件における外観上の形態、特に主枠体と副枠体とがアルミ押出形材を材料とし(同(1))、ボルトが主枠体の前面側からは見えないようにしてある(同(7))という形態のみに着目してイ号物件を選択、購入するとは考え難く、外観上の形態についても副枠体の裏面側も見、かつ、のぞき窓用窓枠としての取付け容易性や性能に関係する内部構造を検討したうえで選択、購入するものと認められるところ、前記第一物件目録(一)及び第二物件目録並びに検甲第三、第四号証によれば、外観上の形態においても、副枠体の裏面側に顕れるものが、原告製品ではボルトの先端とこれに螺合したナットであるのに対し、イ号物件ではボルトの頭であるという明瞭な相違があり(イ号物件の方が原告製品に比べて外観上すつきりした印象を与えるだけでなく、一見して締付けに用いる道具の違いを感得させる。)、内部構造において、イ号物件では主枠体に原告製品には見られない環状の突部が一体に形成されており、また、パッキングが、原告製品では内周面に窓ガラス板の周縁に嵌合する周溝を形成してある断面h字形の部材と断面矩形の小さな部材とからなるのに対し、イ号物件では内周面に窓ガラス板の外周縁に嵌合する周溝を形成してある断面略コの字形の第一パッキング部材5a並びに断面矩形の小さな第二パッキング部材5b及び第三パッキング部材5cの三部材からなるという明瞭な相違があることが認められるから、イ号物件を見て原告製品と誤認して被告に注文するというような事態は考え難い(しかも、弁論の全趣旨によれば、被告は、イ号物件の包装に被告の商号と本店住所を大きく表示していることが認められるから、なおさらのことである。)。現に、原告代表者の供述によれば、配電盤等のメーカーは、イ号物件を原告の製品ではなく被告の製品であると認識したうえで、原告製品とイ号物件の性能が同じであれば値段の安いイ号物件の方がよいということで、イ号物件を選択、購入するという事態が生じていることが認められるのであって、右供述その他本件全証拠によるも、イ号物件を原告の製品であると誤認して選択、購入するというような事態が生じているとは認められない。

以上に反する原告の主張は採用することができない。

4  右のとおり、原告製品の形態は商品表示性を取得しているものとは認められず、また、それ故にイ号物件と原告製品との間で出所の誤認混同が生じているとも、生じるおそれがあるとも認められないから、不正競争防止法に基づく原告の差止請求及び損害賠償請求は、理由がないといわなければならない。

第四  結論

よって、原告の請求をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 田中俊次 裁判官 小出啓子)

第一物件目録(一)

別紙図面に示すボックス等ののぞき窓用窓枠

一 構造

第2図及び第3図において、配電盤などのボックスの正面板1に窓孔2を設けてあり、この窓孔2に対象の窓枠Aが嵌め込まれる。

窓枠Aは主枠体3と副枠体4とを有し、両枠体3、4間にネオプレンスポンジ製の第一パッキング部材5aと、ネオプレンゴム製の第三パッキング部材5cと、ネオプレンスポンジ製の第二パッキング部材5bとからなるパッキング5が介在する。主枠体3と副枠体4とはいずれもアルマイト加工仕上げをしたアルミニウム合金板を四角形に各コーナー部を丸くして曲げを形成し、その両端を突き合わせ溶接して環状に形成してある。

主枠体3には、背面側の外周近くに環状の突部20を一体に形成し、該突部20にねじ孔12aを合計一〇か所設けてある。副枠体4には、外周近くにボルト6が挿通されるボルト通し孔7を前記ねじ孔12aに対応させて形成してある。

パッキング5は、内周面に周溝10が、また室外側の側面に主枠体3の背面側の係止溝21へ嵌合する突起部22が形成された環状の第一パッキング部材5aと、主枠体3の背面において前記突部20の外周に添う環状の第二パッキング部材5bと、副枠体4の前面においてボルト通し孔7の外周に添う環状の第三パッキング部材5cとからなる。第一パッキング部材5aは前記周溝10を金網入りの窓ガラス板11の外周縁に嵌合することにより、窓ガラス板11の外周に装着される。

この窓枠Aを用いてガラス張りの「のぞき窓」を構成するには、まず、窓ガラス板11の外周縁部に第一パッキング部材5aを周溝10を介して嵌め込む。次に、主枠体3の背面に第二パッキング部材5bを嵌め込む。そして、正面板1の窓孔2を挟んで正面外側に主枠体3を、裏面内側に副枠体4を配して重ね合わせ、裏側からボルト6を副枠体4の各ボルト通し孔7に通し、各ボルト6の先端をねじ孔12aに螺合して締着する。その際に窓ガラス11は両枠体3、4間にあって、主枠体3の背面に設けた環状の係止溝21に第一パッキング部材5aを介して外れ止め状に仮止め係合されている。

このねじ孔12aへのボルト6の締付けにより、第2図に示すごとく主枠体3と副枠体4との対向する外周縁どうしが第二パッキング部材5bと第三パッキング部材5cとを介して窓枠2の孔縁aを内外方向からしつかりと挟持する。窓ガラス板11も両枠体3、4間に第一パッキング部材5aを介して挟着保持される。そして、各ボルト6は、窓孔2内にあって孔縁aに近接する状態下にある。

二 作用効果

ボルト6は窓孔2内を通るものであるから、正面板1には窓孔2の孔縁部にボルト通し孔を開ける煩雑な作業を要さず、該孔縁部にボルト通し孔を開けることに起因する発錆の問題もない。同時に窓枠の取付け作業性もよい。

この取付け状態において、火災時に熱を受けて各パッキング部材5a・5b・5cが焼損しても、ボルト6で主枠体3と副枠体4とは依然として孔縁aに取り付けられているから、両枠体3、4間で窓ガラス板11を支持しており、該ガラス板11の脱落をよく防止することができる。

更に、ガラス板11を取り付けた第一パッキング部材5aを主枠体3の環状の係止溝21へ嵌め込み固定できるため、ガラス板11の取付けが容易となる。

三種類のパッキング部材を必要とするものの、H型のパッキングを使用する場合に比較して、各パッキング部材5a・5b・5cの取付けが著しく容易となる。

突部20を主枠体3と一体的に形成しているため、主枠体3の製作費の削減が可能となる。

三 図面の簡単な説明

第1図は窓枠全体の正面図、第2図は取付け状態での要部の縦断側面図、第3図は要部を分解して示す縦断側面図、第4図は主枠体に第二パッキング部材を装着した状態での裏面図、第5図は副枠体に第三パッキング部材を装着した状態での正面図、第6図は窓枠の取付け方法の説明図である。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

第4図

〈省略〉

第5図

〈省略〉

第6図

〈省略〉

第一物件目録(二)

第一物件目録(一)の「一 構造」欄五行目の「とからなるパッキング5」を削り、一二行目の「パッキング5」を「パッキング」に改めるほかは、右目録及び各図面のとおり。

第二物件目録

添付図面のとおりのボックス等ののぞき窓用窓枠

第1図(正面図)

〈省略〉

第2図(背面図)

〈省略〉

第3図(平面図)

〈省略〉

〈19〉日本国特許庁(JP) 〈11〉特許出願公告

〈12〉特許公報(B2) 昭64-4033

〈51〉Int.Cl.4E 06 B 1/56 1/36 H 02 B 1/08 1/12 識別記号 庁内整理番号 Z-6867-2E Z-6867-2E J-7059-5G D-7059-5G 〈24〉〈44〉公告 昭和64年(1989)1月24日

発明の数 1

〈54〉発明の名称 ボツクス等ののぞき窓用窓枠

〈21〉特願 昭58-122789 〈65〉公開 昭59-27082

〈22〉出願 昭55(1980)9月8日前実用新案出願日援用 〈43〉昭59(1984)2月13日

〈72〉発明者 篠原耕一 兵庫県伊丹市梅の木5丁目5番地の24号

〈71〉出願人 篠原電機株式会社 大阪府大阪市北区松ケ枝町6番3号

〈74〉代理人 弁理士 折寄武士

審査官 吉田秀推

〈56〉参考文献 実公 昭36-27093(JP、Y1) 実公 昭46-22355(JP、Y1)

〈57〉特許請求の範囲

1 金属板からなる環状の主枠体3と、

主枠体3の背面側に対向状に配される、金属板からなる環状の副枠体4と、

前記両枠体3、4間に介装される環状のパツキング5とからなり、

主枠体3の幅方向中央部には、背面側に向けてボルト6を適当間隔置きに値設し、

副枠体4およびパツキング5には、前記ボルト6の挿通を許すボルト通し孔7、8をそれぞれ設け、

パツキング5の内周面には窓ガラス板11の周縁に嵌合する周溝10を形成し、

パツキング5の外周面には窓孔2の孔縁aに添う縁部を連成してあり、

主枠体3および副枠体4は、その外周縁が窓孔2の孔縁aに均等に重なるよう幅寸法を設定してあり、

副枠体4の背面側から前記ボルト6にナツト12を螺合することにより、主枠体3と副枠体4の外周縁が、パツキング5の外周面に連成した前記縁部を介して窓孔2の孔縁aを挾持する取付け状態となり、

前記取付け状態において、前記ボルト6が窓孔2の孔縁aに近接ないし接触していることを特徴とするボツクス等ののぞき窓用窓枠。

発明の詳細な説明

この発明はキユービクル等の如きボツクスの正面板に形成されるガラス張りのぞき窓における窓枠の改良に関するものである。

ボツクスののぞき窓における窓ガラス固定構造としては、その窓枠として外周面及び内周面にそれぞれ溝をそなえる断面H字形のゴム質環状枠を使用し、先づ内周面の溝を利用して枠内に窓ガラスを嵌め、次に外周面の溝を利用してのぞき窓の孔縁に装着する形式がある。

この形式の窓枠は締付ボルトを必要とせず従つてのぞき窓孔縁へのボルト通し孔の形成も不要とするが、反面窓ガラスの取付けに熟練を要し且つ2人以上の手を必要とし、作業に相当の時間がかゝるのみならず、火災発生でゴム質の環状枠が溶け、窓ガラスが外れるおそれがある。

窓ガラス取付に熟練を要しないものとしてはガラスの周縁にパツキングを装着してこのパツキングを表裏の金属枠で挾み、且つ表側の金属枠に通したボルトをのぞき窓孔縁に形成した孔に通し、次いで裏側の金属枠にも通してナツト締着するものであるため、窓ガラス装着に当つて窓孔縁に予めボルト通し用孔を形成する必要があり作業が煩雑である。

この発明はボツクス等ののぞき窓における窓枠の上記問題点を解決したもので、その目的とするところはのぞき窓孔縁に窓枠取付けのためのボルト通し孔を設けず且つ枠体の取付けが容易であり、しかもパツキングが溶けても窓ガラスが外れるおそれなき窓枠とするにある。

この発明の詳細を、添付図面に示す実施例に基いて以下に説明する。

第1図において1はボツクスの正面板、2はそののぞき窓における窓孔である。

のぞき窓には窓枠Aが嵌め込まれている。この窓枠は第2図に示すように主枠体3と副枠体4、及び両枠体間に介在されるパツキング5とからなる。

主枠体3並びに副枠体4は帯状金属板からなる環状を呈し、パツキング5もこれらの枠体に対応した環状を呈している。

主枠体3には各辺部において巾方向中央部に背面側に向く複数個のボルト6が溶接により植設されており、副枠体4並びにパツキング5には主枠体のボルト6に対応する部分にボルト通し孔7、8がそれぞれ形成してある。

主枠体3並びに副枠体4はその外周全周縁を窓孔の孔縁aに均等に重なるように巾寸法が設定してあるものとする。

パツキング5はその外周面並びに内周面に周溝9、10が形成してあり、外周面の周溝9は窓の孔縁を、内周面の周溝10は窓ガラス板11の周縁をそれぞれ嵌合するようにしてある。しかし内周面の周溝はそのまゝとするが外周面では窓の内外何れか一方でその孔縁に添う縁部を連成し、内外何れか他方に添わせる部分は別体のものとして窓への装着を容易にすることもできる。

又パツキングは、内周面の周溝10はその溝側壁を、ガラスの周縁を保護するために充分な厚みにする必要があるが、外周面に形成される、窓の孔縁に添わせる縁部は防水の目的を果すだけであるから薄くしても支障がなく、パツキングの窓の孔縁に添わせる縁部を薄くした場合主枠体並びに副枠体を図示のように平らな帯状としたのではパツキングを均等に挾持し得ないからこれらの枠体はボルトを植設した部分やボルト通し孔部分から外側を一旦裏面側に段状に屈曲するものである。

上記の構成からなる本発明の窓枠Aを用いてガラス張りののぞき窓を構成するには、まず窓ガラス板11の外周縁部にパツキング5の内周面の周溝10を嵌め込む。次に、パツキング5の表側に主枠体3を重ね、これに植設のボルト6をパツキング5のボルト通し孔8に挿通し、窓ガラス板11に主枠体3とパツキング5とを組み付けた結合体をのぞき窓の窓孔2に表側から嵌め込み、該窓孔2の孔縁aにパツキング5をはさんで主枠体3を当て付ける。かくして、パツキング5の外周面に連成した縁部を窓孔2の孔緑aに添わせた状態で、パツキング5の内面(背面)側に副枠体4を重ね、前記ボルト6を副枠体4のボルト通し孔7に挿通し、副枠体4の背面側から該ボルト6の突出先端部にナツト12を螺合して締着することにより、窓枠Aの装着が完了する。

このボルト6へのナツト12の締め付けにより、主枠体3と副枠体4の外周縁が、パツキング5の外周面に連成した縁部を介して窓孔2の孔縁aを確りと挾持する。そして、ボルト6は窓孔2内に位置するが、窓孔2の孔縁aに近接ないしは接触する状態にある。

以上説明したように本発明によれば、主枠体3に植設したボルト6は窓孔2内を通るものであるから、従来のごとく窓孔2の孔縁部にボルト通し孔を明ける煩雑な作業を要さず、かつ該孔縁部にボルト通し孔を明けることに起因する発錆の問題もない。

にもかかわらず、ボルト6にナツト12を螺合することにより、主枠体3と副枠体4の外周縁が、パツキング5の外周面に連成の縁部を介して窓孔2の孔縁aを確りと挾着する取付け構造となつており、窓枠の取付け作業性も良い。そして、この取付け状態において、万一外部からの火災の熱を受けてもパツキング5が焼損を受けるに止まり、前記ボルト6が窓孔2の孔縁aに近接ないし接触するよう位置設定されているので、該ボルト6で前記孔縁aに主枠体3と副枠体4とが焼け残つて窓ガラス板11を支持しており、該ガラス板11の脱落をも防止する利点を有する。

図面の簡単な説明

第1図は本発明に係るボツクスののぞき窓における窓枠の一例の正面図、第2図は同上の拡大した一部切欠右側面図である。

A……窓枠、3……主枠体、4……副枠体、5……パツキング、6……ボルト、7、8……ボルト通し孔、9、10……バツキングの周溝、1……ボツクスの正面板、2……のぞき窓の窓孔。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

86 D 2 (89 F 3) (89 J 13) 特許庁 実用新案公報 実用新案出願公告

昭36-27093

公告 昭36.10.16 出願 昭35.1.25 実願 昭35-3266

出願人 考案者 笹井達二 大阪市東淀川区三津屋南通3の3

代理人 弁理士 鎌田嘉之

硝子版等の接手

図面の略解

第1図は本案の縦断側面図、第2図は同分解斜面図である。

実用新案の説明

本案は一対の接手版1、2の各対応面に掛突条3、4の一対を対向突設するとともに版1、2の各中央には掛止溝5を備えた掛止部6と掛止壁7を嵌脱自在に形成し、掛止壁7の一部に立設した緊締螺杆8を前記掛止溝5の螺孔9に螺着自在とし、両接手版1、2間に掛突条3、4との嵌合を介する弾褥版B、Bにより硝子版A、A等を挾持自在として成るものである。なお緊締螺杆8は掛止壁7の切欠部10より挿出されている。

本案は上記の構造から成るもので、硝子等の破損し易くかつ工作し難い素材版の接手として一対の板状接手版1、2の各対応面に一対の掛突条34とさらに一対の掛止部6と掛止壁7をそれぞれ設けて掛止部6の掛止溝5内に一方の掛止壁7を嵌合して重合離隔状とし、さらに掛止壁7の一部を割いて挿設した緊締螺杆8を掛止溝5側の螺孔9内に螺着させて連結するごとくしたので、硝子版A等は両版1、2の対応中間にゴム、合成樹脂等の弾褥版Bを介入させて掛突条3、4にて連結を緊密とし、この弾褥版B中に硝子版A等の取付側辺を挾挿すれば緊締螺杆8を螺孔9側に螺じ込むことにより両版1、2は極めて緊密に一体化されるとともにその弾褥版Bの弾支を介し版A、Aを揺動脱離のおそれなくしかも緩衝的に安全に連結支持するものである。

このさい各弾褥版Bはいずれも上下よりの掛突条3、4の挿入によつて側方に移動せず、また版1、2は掛止溝5と掛止壁7の嵌合により極めて確実に揺動のおそれなくまた緊締螺杆8を簡単に螺じ込むのみで足りるためその工作において硝子版Aに対し何等工作を必要とせぬもので、極めて簡単迅速でありまた組立外観においても佳良で硝子等の縁枠兼用ともなる利点があり実用上工作し難いまた割れ易い素材版の接手として有益である。

登録請求の範囲

図面に示す通り、一対の接手版1、2の各対応裏面の両側に弾褥版Bの掛止用川掛突条3、4を対向突設し、版1、2の同じく中央には掛止溝5を有する掛止部6と掛止壁7の一対嵌合自在に対設し、掛止壁7の所要部分を切欠した切欠部10とこれに対応して掛止溝5の底面に螺孔9を設け、掛止部6と掛止壁7を相嵌合させるとともに両版1、2の両側内部に弾褥版B、Bを嵌設し、版1の切欠部10より挿出させた螺杆10を螺孔9に螺着させて成る硝子版等の接手の構造。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

〈51〉Int.Cl. E 06 b B65d 〈52〉日本分類 89 J 13 64 G 1 日本国特許庁 〈10〉実用新案公報 〈11〉実用新案出願公告

昭46-22355

〈44〉公告 昭和46年(1971)8月3日

〈54〉耐水圧気密サツシ

〈21〉実願 昭42-59703

〈22〉出願 昭42(1967)7月12日

〈72〉考案者 出願人に同じ

〈71〉出願人 岡村一郎

東京都新宿区東大久保2の270

図面の簡単な説明

第1図は本考案による耐水圧気密サツシの使用状態を示す部分的な切欠斜面図、第2図はその断面図、第3図はその変形例を示す断面図、第4図は屈曲面形成に利用した本案サツシの使用関係を示す断面図である。

考案の詳細な説明

本考案は耐水圧気密サツシの考案に係り、水圧を受けても漏洩を見ることのない水密サツシを提供し、又斯かるサツシを簡易且つ低廉に製作せしめようとするものである。

各種構築物においてサツシは広く利用されているが、これら従来のサツシは断面H型の枠材にコーキング材を嵌装して硝子板類を装着したものであるからその硝子板面における気密性はコーキング材の弾性のみに依拠することになり、例えば水槽の如きにおける硝子板の装着に適用しても充分な水密性を保持することができにくい。又従来の上記のようなサツシはH型材を組付けるものであり全体が正確に連結されていることを必要としたから夫々の装着部は施工現場で、現場合せの製作施工しなければならないこととなり、その価格が高額となりしかも不正確で取扱いも容易でない等の欠点を有した。

本考案は上記したような従来のもの、欠点を改め、水槽やタンクの如きに適用して充分な水密性を維持せしめることができ、しかもその製作組立の容易な耐水圧性の水密サツシを得ることに成功したものである。即ち本考案の実施構成を図面に示すものについて説明すると、本考案においては押え部材1、L形アングル部材2、2、座板4及びこれらを連結緊締する締子3を主要なる構成部材とし、これらに保持ガスケツト5及びカバー材11を組付けて成るものであつて、押え部材1は連結装着される硝子板の如き透明材8の内側に位置せしめられ、これに締子3を一定間隔に配装せしめて成り、その内側にL形アングル部材2、2の受入れ部1’を形成している。L形アングル部材2、2は背中合わせように組付けられてその一端を上記受入れ部1’中に装入せしめ、その他端部と押え部材2との間に保持ガスケツト5を夫々受容し、これらの保持ガスケツト5に上記透明材8を装嵌せしめており、斯うして対設されたL形アングル材2、2の間には締子3が挿入されている。座板4は平鋼板の如きが用いられ、これを前記したL形アングル材2、2の他端部に股つて添設し、該座板4に前記締子3を各挿通してナツト10により緊締せしめ、これらのL形アングル部材の他端部、座板4及びナツト10部分にはカバー材11を覆着して化粧せしめる。保持ガスケツト5としては木質、ゴム質或いは合成樹脂質の如き資材が単独又は組合わせて採用され、図示のものにおいては木質の芯材6に対してゴム又は樹脂質の防水性コーキング材7を被覆せしめたものを示し、更に要すれば斯かる保持ガスケツト5と押え部材1との間にネオプレーンゴムその他の防水性介装片9を介装せしめ、又L形アングル材2、2の一端と押え部材1との間にもネオプレーン又はスポンジ材のようなクツシヨン材12を介装させる。前記した座板4は適宜L形アングル材2、2に対して溶接の如きによつて結合され、カバー材11は止子13によつて締子3の先端部の如きに定着される。

なお押え部材1は第1、2図又は第3図に示すようなC形鋼が用いられ、その内部に空室14を構成させるようにしてもよいが、又第3図に示すようなハツト形鋼を用いて内部を緊密な状態に組付けるようにしてもよい。

上記したような本考案によるときは押え部材1L形アングル材2、2、座板4より成り、それらの間に保持ガスケツト5を介在せしめて締子3で緊締するものであるから保持ガスケツト5は透明材8を保持すると共に締子3による緊圧作用を受けて強固に緊締定着され充分な気密乃至水密性を有すると共に水槽の如きに施用して水圧を受けても全く漏水をみない耐水圧性能を附与することができるものであり、斯くして水族館その他における水槽、各種タンク類その他に充分実用せしめ得る有効なサツシ材を提供することができ、その構造も軽量形鋼その他の形鋼部材、軽金属形材乃至鋼片であるC形鋼(ハツト形鋼)、L形アングル材、平鋼板の如きがそのま、使用され、それらを締子3で緊締することによつて組付け関係を完成し得るので組立構成が甚だ簡易で現場の如きにおいて簡便且つ正確に有効な組付けを得、比較的低廉な製品を提供し得るものであり、しかも押え部材1及び平鋼板の如きである座板4の端部を適度に屈曲せしめることにより他のL形アングル材2、2、保持ガスケツト5或いは締子3はそのま、で第4図に示すような屈曲した透明材8、8の連結を可能ならしめ得る等の効果を有し実用上、製作上並びに安全性の効果が大きい考案である。

実用新案登録請求の範囲

押え部材1、L形アングル材2、座板4及び上記押え部材1に装着され座板4に挿通して締着される締子3より成り、押え部材1とL形アングル材2の間に透明材8を保持する保持ガスケツト5を介装させるようにした耐水圧気密サツシ。

第1図

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第4図

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第2図

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第3図

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乙第七号証

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特許公報

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実用新案公報

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実用新案公報

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